上顎前突(じょうがくぜんとつ)、一般には「出っ歯」として知られている咬み合わせです(Proffit WR, 2018; O’Brien K et al., 2003)。これは、上顎の前歯が下顎の前歯よりも前方に突出している状態を指し、不正咬合の一つに分類されます。この状態は見た目だけでなく、咀嚼や発音、口腔内の健康にも影響を及ぼす可能性があります(Proffit WR, 2018; O’Brien K et al., 2003)。

出っ歯(上顎前突)
出っ歯(上顎前突)
上顎前突(じょうがくぜんとつ)、一般には「出っ歯」として知られている咬み合わせです(Proffit WR, 2018; O’Brien K et al., 2003)。これは、上顎の前歯が下顎の前歯よりも前方に突出している状態を指し、不正咬合の一つに分類されます。この状態は見た目だけでなく、咀嚼や発音、口腔内の健康にも影響を及ぼす可能性があります(Proffit WR, 2018; O’Brien K et al., 2003)。
遺伝的要因
上顎前突はしばしば遺伝的要因によって引き起こされます。顔面骨格や顎の形、歯の大きさや位置は親から子へと遺伝する傾向があります(Brook PH, 2009)。上顎が成長しやすい家系や、下顎の成長が遅れがちな家系では、上顎前突が発生しやすくなります(Brook PH, Shaw WC, 1989)。
環境的要因
幼少期の習慣も上顎前突の発生に影響することがあります。特に、長期間の指しゃぶりや口呼吸、舌癖などは、上顎の成長を前方に促進し、下顎の成長を阻害する要因になります(Proffit WR, 2018)。また、口腔周囲筋のバランスの乱れも上顎前突の原因となり得ます。
見た目の変化
上顎前突の特徴として、上顎の前歯が突出し、唇を閉じた状態でも前歯が見えることがあります。これは心理的な負担となり、自己肯定感に影響を与えることもあります(Kiyak HA, 2008)。
咀嚼や発音の影響
前歯で食べ物をうまく噛み切れない、奥歯に過剰な力が加わることで、咀嚼に問題が生じます。また、発音が不明瞭になり、特に「サ行」「タ行」が正確に発音できない場合もあります。
口腔内の健康への影響
上顎前突により、歯並びが乱れることでブラッシング不良からプラーク(歯垢)がたまりやすく、むし歯や歯周病のリスクが高まります。また、噛み合わせの問題から歯の摩耗や顎関節への負担を生じることがあります。
上顎前突の治療は、年齢や成長の有無によってアプローチが異なります。
成長期である子どもは、顎の成長を利用して矯正治療を進められることが大きなメリットです。顎の成長をコントロールし、正しい位置に誘導することで、上顎前突を効率よく改善できます(McNamara JA, 2006)。成長を利用した治療には、通常のマルチブラケット装置に加えて、ヘッドギア、アクチバトール、上顎急速拡大装置などの装置が使用されます(McNamara JA, 2006; O’Brien K et al., 2003; Sayeh Ehsani et al., 2015; Jena AK, Duggal R, 2010)。また、口呼吸の改善や口腔筋機能訓練も重要です(McNamara JA, 2006)。
成人は成長が止まっているため、現在の骨格に合わせた治療計画策定が必要です。歯の位置を矯正装置(ブラケットやマウスピース型矯正装置等)で調整し、理想的な咬み合わせを実現します。重度の上顎前突や骨格的な偏位が大きい場合は、外科的矯正治療を検討することもあります。
当院では、子どもから成人まで、成長を利用した治療から外科矯正まで幅広く対応しています。患者さん一人ひとりの成長段階や骨格の状態をしっかりと診断し、最適な治療方法をご提案いたします。
咀嚼や発音の改善
しっかりと食べ物を噛み、明瞭に話すことができます。
口腔内の健康維持
正しい歯並びは、むし歯や歯周病のリスクを減らします。
見た目の改善
自然な笑顔を取り戻し、自己肯定感の向上が期待されます。
はい、上顎前突は矯正治療によって改善することが可能です。治療法は症状の程度や年齢、骨格の状態によって異なり、骨格的な偏位量により外科的手術を併用することもあります(保険適用)。
矯正治療の場合、一般的に1年半から2年半程度が目安です。外科的手術を併用する場合も、術前・術後の矯正期間を含めた期間は同程度です。
矯正装置の装着直後や調整後に、歯が動くことによる痛みや違和感を感じることがありますが、ほぼ全てのケースで、数日で慣れます。
治療方法や装置の種類によって異なりますが、矯正治療は数十万円から百万円、外科的手術を伴う場合はその半額程度で治療が可能です(保険適用の場合)。詳細は初診時にご相談ください。
一般的に、6歳以上が治療開始の目安とされていますが、お口の中の状態やはえかわりの程度には数年の個人差があります。成長期を利用した治療時期の検討のため、早めに一度受診相談されることが望ましいでしょう。
はい、もちろん成人でも矯正治療は可能です。ただし、成長が止まっているため、現在の骨格に応じた歯の位置を考えることが重要です。また、骨格の位置によっては外科的手術が必要となる場合もあります(保険適用)。
矯正装置に慣れるまでの間、食事や発音に違和感を感じることがありますが、1週間程度で徐々に慣れていきます。
治療後にリテーナー(保定装置)を使用すれば後戻りの心配はほぼありません。指示された期間、リテーナーを正しく使用することが重要です。
はい、上顎前突は遺伝的要因が関与することがあります。家族に同様の症状がある場合、注意が必要です。
従来のメタルブラケットを使用したワイヤー矯正は目立つことがありますが、クリアブラケット・マウスピース型矯正装置等、目立ちにくい選択肢もございます。
1. Proffit WR, Fields HW, Sarver DM. Contemporary Orthodontics. 6th ed. Elsevier, 2018.
2. Brook PH, Shaw WC. The development of an index of orthodontic treatment priority. European Journal of Orthodontics. 1989;11(3):309-320.
3. Kiyak HA. Does orthodontic treatment affect patients’ quality of life? Journal of Dental Education. 2008;72(8):886–894.
4. McNamara JA. Components of Class II malocclusion in children 8–10 years of age. The Angle Orthodontist. 2006;76(5):713–720.
5. O’Brien K, Wright J, Conboy F, et al. Effectiveness of early orthodontic treatment with the twin-block appliance: a multicenter, randomized, controlled trial. Part 1: Dental and skeletal effects. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2003;124(3):234-243.
6. Sayeh Ehsani, Brian Nebbe, David Normando, Manuel O. Lagravere, Carlos Flores-Mir. Short-term treatment effects produced by the Twin-block appliance: a systematic review and meta-analysis. Eur J Orthod. 2015;37(2):170-176.
7. Jena AK, Duggal R. Treatment Effects of Twin-Block and Mandibular Protraction Appliance-IV in the Correction of Class II Malocclusion. Angle Orthod. 2010.
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